ウリポと文学における制約 ーー 創作・再創作・遊戯・翻訳
[討論会] エルヴェ・ル・テリエ(作家、潜在的文学工房「ウリポ」メンバー)、ポール・フルネル(作家、潜在的文学工房「ウリポ」メンバー)
18:00~20:00 ホール フランス語 同時通訳付
本講演では、「制約」、「文学」、「制約下の文学」というものを可能な限り定義することを試みる。同時に、「潜在性」、「工房 (Ouvroir)」という概念についても明らかにしたいと思う。制約の多様性に導かれ、「古典」か否かを問わずあらゆる作品を通し、また、言語的制約、意味的制約、読者との信頼・共犯関係の度合いといった様々な「分類」の試みを通して、文学における制約を明確にしながら探求していく試みである。
そこでウリポの「先取による剽窃者 (plagiaires par anticipation)*」のいくつかの例の提示を避けることはできない。なぜなら、ウリポのプロジェクトは、総合的(斬新で創造的、派生的)でありながら、分析的(百科全書的で分類学的)だからである。
全ての翻訳がどれほど「再創作」であるか、また、制約のもとに書かれた作品の翻訳がそれ自体どれほどウリポ的な習作かを示す。そして、アルファベットで書かれた作品から表意文字で書かれた作品への翻訳の問題にも(手短に)触れ、講義というよりも、問題提議・開かれた問いという形でこの問題に迫る。
*ピエール・バイヤールが提唱した逆説的表現。読み手の読書経験により、時間的に先行している文学作品や作家が、後世の作品や作家に影響を受ける(ように見える)こと。
「ウリポ」について
ウリポ(潜在的文学工房)は、1960年に、数学者・化学者のフランソワ・ル・リオネと作家のレイモン・クノーによって設立された国際的な文学創作・研究グループ。その目的は、言語の可能性を追求し、「制約」、すなわち、指示、技法、形式、構造、手順などを文学と言語の全ての要素に適用させることにより、文学を刷新することである。
メンバーは、「脱出しようとしている迷路を自ら作り上げたネズミたち」で、41名全員が満場一致で選出された。彼らは辞任も除名も不可である。
非常に活動的なグループで、その長寿さゆえに、ジョルジュ・ペレック、イタロ・カルヴィーノ、ジャック・ルーボーといった多くのメンバーは逝去を理由に会員を免除されている。
エルヴェ・ル・テリエ(作家、潜在的文学工房「ウリポ」メンバー)
エルヴェ・ル・テリエは作家。1992年よりウリポのメンバー。1957年パリ生まれ。数学者で、その後科学ジャーナリストとして活躍していた。短編(Les amnésiques n’ont rien vécu d’inoubliable, 1998年など)、詩(Zindien, 2000年など)、演劇(Moi et François Mitterrand, 2016など)、報道(Le Monde, France Culture)にも関心を持つ。1992年に出版されたLe Voleur de nostalgie以降、10数冊あまりの小説と、家族をテーマにした物語Toutes les familles heureusesを上梓。2013年に刊行されたSes Contes liquides でブラック・ユーモア大賞を、2020年にはL’Anomalieでゴンクール賞を受賞。近著のうちの1つであるLe Nom sur le murは、20歳で亡くなった若きレジスタンス活動家の生涯を描いている。1992年、ウリポの新メンバーに選出され、現在は会長を務める。
L’Anomalie『異常【アノマリー】』(早川書房, 2024)を含め、3冊が日本語に翻訳されている。
ポール・フルネル(作家、潜在的文学工房「ウリポ」メンバー)
ポール・フルネルは作家。1947年サン=テティエンヌ生まれ。ラムセイ、セゲルス等の出版社で編集者として活躍。作家の権利と利益を擁護する団体 Société des gens de Lettresの会長を務めたこともある。サンフランシスコのアリアンス・フランセーズを指揮し、カイロとロンドンでは文化部担当官を務めた。現在は、フルタイムの作家として活躍、余暇はサイクリングに充て、傍らウリポの活動に参加している。
著書:(小説)Attends voir, Jeune-Vieille, Jason Murphy, La Liseuse, Un homme regarde une femme, Foraine, Chamboula, Faire Guignol, Attends voir, Le Livre de Gabert ; (短編小説) : Les petites filles respirent le même air que nous, Les grosses rêveuses, Les athlètes dans leur tête, Les manières douces de Profane Lulu, Courbatures, Peloton maison, Imagine Claudine ; (演劇) : Foyer Jardin ; des essais : Guignol, Poils de Cairote, Besoin de vélo, Anquetil tout seul, Les cartes du Tour ; (詩) : Toi qui connais du monde, Terines d’amérique, Le bel appétit.
【司会】ラウル・ドゥルマジュール(東京大学)
【主催】日仏会館・フランス国立日本研究所