2月
26
2020

共和国フランスは1940年に残酷な消滅を経験した。フランス人が両大戦間期をことさらに愛せないのはおそらくそのせいだろう。フランス人にとって、人間主義がもたらす夢や希望(ジュール・ロマン)も、平和への誓い(ジュール・ロマン、ジャン・ジオノ)も、正面から信じてはならないものになってしまった。このことは、著名な劇作家であり、第一次世界大戦の記憶にとりつかれた外交官でもあったジロドゥにあってはさらに象徴的である。彼は第三共和制最後の政府において情報局長を務めている。また、ジロドゥを語るにはどうしても、ある一定のきな臭さがぬぐえない。しかし彼はけして、共和制にかけた理想を裏切ったわけではない。そうではなく、崩壊の危機と、再生の可能性の狭間の緊張のなかに、その理想を容赦なく置いたのが彼だった。ジロドゥの人間主義とは、フェミニスト的でありまたエコロジスト的なそれであって、さらにはかつて啓蒙の時代にうたわれた普遍主義にも相通じるものであった。

アンドレ・ジョブはトゥール大学で博士(学術)を取得、大学などの高等教育機関で教授を務める。ジロドゥ研究の第一人者として多数の著書があり、2018年にオノレシャンピオン社より刊行された Dictionnaire Jean Giraudoux(ジャン・ジロドゥ事典)の監修を担当。最新刊は Giraudoux. L’humanisme républicain à l’épreuve(2019年、ミシャロン社)。

【講演者】アンドレ・ジョブ(クレルモン・オーヴェルニュ大学)
【司会】ヴァンサン・ブランクール(慶應大学)

【主催】科学研究費 基盤研究(B)「ドイツ占領下フランス南部における定期刊行物と検閲制度についてのアーカイブ研究」19H01245
【共催】日仏会館・フランス国立日本研究所

* 日仏会館フランス国立日本研究所主催の催しは特に記載のない限り、一般公開・入場無料ですが、参加にはホームページからの申込みが必須となります。