ニコラ・モラール |
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日仏会館フランス事務所研究員 東京大学文学部外国人研究員 フランス国立東洋言語文化研究所・日本研究センター補助研究員 連絡先 〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿3-9-25 日仏会館フランス事務所 nicolas.mollard[の後に@mfj.gr.jp] 専門分野 文学史・思想史(近世・近代) 近代日本における「作者」概念の形成 辺境の表象と知識の伝播 近代日本思想の翻訳 研究計画 1.近代日本における「作者」概念の形成 今日、「作者」という概念からは一般的に「個性的な創作者」というイメージが喚起されるであろう。それは、ロマン主義の思想が現代に至るまで通念としていかに定着してきたかを物語っている。文化製品市場が拡大し、著作権の侵害行為が増加する現代においても、文芸創作の美学・法律的な基盤は揺るがず、むしろ逆に固まっていくようである。本研究の目的は、近代を軸にして日本における「作者」概念を考察することにある。江戸〜明治時代を中心に、戯作者・小説家を出発点におきながら、劇・詩・随筆・芸術一般の創作者も多少考慮の範囲に入れる予定である。さらに、美学(オリジナリティー)や法学(著作権)に限らず、文学(作者の自己表象)・社会学(作者の職業化)・哲学(個性の誕生)・経済学(作者の収入)等の観点からも、「作者」概念を追及する予定である。 2.辺境の表象と知識の伝播 この研究の目的は、世界秩序の中で日本の位置が考えられるようになった近世から近代に至る時代の転換期における文芸作品と国家意識の関係を明らかにすることである。アメリカの政治学者ベネディクト・アンダーソンは、「想像の共同体」としての国民国家が特に言語や文学によって形成されたことを指摘した。一方、もちろん国民国家は、中央政権を軸に成立するものではあるが、自他の区別が問われている辺境地の役割も決して小さいものではない。その役割を明らかにするためには、18〜19世紀の狂言作者や戯作者、浮世絵師などの辺境観を研究することに意味があると考える。海外の情報が物珍しかった鎖国時に辺境地で活躍する主人公は、世人の関心を引き寄せた。その例として挙げられるのは、中国人と日本人の混血である国姓爺、豊臣秀吉の朝鮮征伐への復讐を目指す天竺徳兵衛、琉球の第一代の国王舜天王の父とされている源為朝、蝦夷地から海を越えて大陸へ渡りチンギス・カンになった伝説上の源義経などである。前述の人物を主人公とし、海外情報を集めた学者の著書(新井白石の『南島志』など)を多彩に取り入れた文芸作品は、読者人口が増えつつあった近世日本において広く鑑賞され、海外のイメージ及び日本のアイデンティティを形成する役割を果たしたのである。 研究業績 |
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