10月
11
2024

1958年、若き映画監督アラン・レネは、初の長編映画『ヒロシマ・モナムール』を撮影するために来日しました。脚本と台詞はマルグリット・デュラスが担当し、デュラスは初めて映画の世界に足を踏み入れることになりました。作品はカンヌ国際映画祭で上映されて大成功を収め、現在では映画史上の重要作品のひとつとなっています。
 
アラン・レネは、演劇界出身のエマニュエル・リヴァと岡田英次を主演に抜擢しました。
少女の頃をヴォージュ地方で過ごしたエマニュエル・リヴァは歩くのが好きで、撮影の合間の自由な時間に広島の街を歩きまわり、カメラ<リコーフレックス>を手に都市の風景―太田川とボート、たち並ぶ木造家屋、微笑む子供たち、傷を抱えながらも大きな変貌の渦中にあるこの街から発せられる、生命=生活を撮影したのです。これらの写真は過ぎ去った時代の記録として、掘立て小屋と真新しいビルが共存する復興途上の都市を見せてくれます。その50年後にあたる2008年、エマニュエル・リヴァは写真展とともに広島を再訪し、地元の人々に温かく迎えられました。
 
映画『ヒロシマ・モナムール』のメイキング本を準備していたマリー・クリスティーヌ・ド・ナヴァセルが、リヴァのパリのアパルトマンでこれらの写真を見つけました。その後岡部昌生と港千尋をとおして広島の人びとに伝えられ、広島で展示されることになりました。広島では市民が幼い頃の顔を思い出し、また青春時代の街並みを再発見する機会ともなり、大きな話題となりました。写真はフランスと日本で、港千尋とマリー=クリスティーヌ・ドゥ・ナヴァセルが共同編集した2冊の本にまとめられています。 『Tu n’as rien vu à Hiroshima』ガリマール社刊 (フランス語)、『Hiroshima 1958』インスクリプト刊 (日本語)
 
日仏会館で開催される展覧会では、同時にアラン・レネやスタッフが撮影した記録の展示、さらに女優エマニュエル・リヴァの死の直前に撮影されたドキュメンタリー『エマニュエル・リヴァ c’est ton nom』も、会期中にギャラリーで上映されます。また2007年のヴェネチア・ビエンナーレ日本館で展示された、岡部昌生による広島のフロッタージュ作品も出品されます。会期中には岡部昌生のワークショップも開催される予定です。東京日仏学院では連動企画として映画『ヒロシマ・モナムール』が上映されます。(イベント詳細:https://culture.institutfrancais.jp/event/cinema20241013)

「HIROSHIMA1958―軌跡」展
会期:2024年10月11日(金)~28日(月) 13時〜18時
会場:日仏会館ギャラリー  入場無料

主催:日仏会館・フランス国立日本研究所
共催:HIROSHIMA1958協会、港千尋(多摩美術大学)、マリー=クリスティーヌ・ドゥ・ナヴァセル(チーフキュレーター)
助成:クレディ・アグリコル・CIBジャパン、JSPS科研費 23K21902
協力:東京日仏学院 多摩美術大学アートとデザインの人類学研究所、(公財)日仏会館

* 日仏会館フランス国立日本研究所主催の催しは特に記載のない限り、一般公開・入場無料ですが、参加にはホームページからの申込みが必須となります。