3月
30
2016

1世紀前から激しく批判され嘲弄され、わずか数十年前には文化大革命で物理的、物質的に破壊された儒教は、こんにち大陸中国では大人気で流行の主題である。しかし儒教という語がカバーするところを正確に定義することはきわめて困難で複雑な仕事である。ヨーロッパ語で「-イズム」で終わる語として、儒教confucianismeは19世紀末にヨーロッパの大学のなかで生まれた宗教学の発明であり、宗教学は儒教をキリスト教christianismeや仏教bouddhismeと並ぶ世界宗教のひとつにした。
宗教学による発明であったがゆえに、儒教に関する議論は、それがはたして宗教か否かという問いに方向づけられ、われわれは今日なおこの偽りの問いから抜け出せないでいる。それに対し日本の注解者は、こうしたイリュージョン的視点のバイアスを受けておらず、儒教の様々な側面の最良の解釈者であり、最も明晰な批判者でさえあった。儒教が中国でナショナリスティックな公的言説の象徴になっている現在、日本が儒教に対してとる距離と抵抗を振り返ることは重要かつ有益なことに思われる。

【ディスカッサント】渡辺浩(法政大学)
【主催】(公財)日仏会館、日仏会館フランス事務所
【協力】(公財)関記念財団

※アンヌ・チェン氏は3月31日に日仏会館501会議室でセミナーを行います。
詳しくはこちらをご覧ください。

* 日仏会館フランス国立日本研究所主催の催しは特に記載のない限り、一般公開・入場無料ですが、参加にはホームページからの申込みが必須となります。