Maison Franco-japonaise: 日仏会館 日仏会館・フランス国立日本研究所(Umifre 19 フランス外務省・国立科学研究センター)

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2019年12月03日(火)

「バンド・デシネをフランス語で読む」第5回レポート

9月25日(水)と27日(金)の18時半から日仏会館図書室読書会「バンド・デシネをフランス語で読む」第5回をを開催しました。両日とも使用したテキストは同じものです。

日仏会館図書室 読書会
バンド・デシネをフランス語で読む 第5回
日時:2019年9月25日(水)、27日(金)18時半~20時 
場所:日仏会館図書室
とりあげた作品:Catherine Meurisse, Moderne Olympia, Futuropolis/musée d’Orsay, 2014.
参加人数:9月25日(水)11名/9月27日(金)10名名
進行役:原正人氏 

日仏会館図書室では、バンド・デシネをフランス語の原書で読む読書会を今年4月から開催しています。進行役を務めていただいたのはバンド・デシネの邦訳を多く手がけている原正人氏です。原氏による読書会の趣旨の説明に続いて、参加者全員に簡単に自己紹介をしていただき、読書会がスタートしました。
なお、「日仏会館図書室 読書会 バンド・デシネをフランス語で読む」は、今後も月1回ペースで開催していく予定です。ご興味のある方は、当図書室の告知をご確認のうえ、お気軽にご参加ください。
以下、原正人氏による読書会の報告です。

今回取り上げた作品は、カトリーヌ・ムリスの『現代のオランピア』(Catherine Meurisse, Moderne Olympia)です。2014年にフランスの出版社Futuropolis(フュチュロポリス)社とオルセー美術館の共同出版という形で出版されました。ルーヴル美術館のバンド・デシネが3冊邦訳されていますが(ニコラ・ド・クレシー『氷河期』、マルク=アントワーヌ・マチュー『レヴォリュ美術館の地下―ある専門家の日記より』、エンキ・ビラル『ルーヴルの亡霊たち』)、本書『現代のオランピア』はそのオルセー美術館版の第1作目に当たります。
Moderne Olympia.png    作者のカトリーヌ・ムリスの作品では『わたしが「軽さ」を取り戻すまで』(大西愛子訳、花伝社、2019年)が翻訳されていて、以下から日本語のインタビューを読むこともできます。
   海外マンガの人々―カトリーヌ・ムリスさんインタビュー:https://comicstreet.net/interview/catherine-meurisse/
   今回、訳読の対象となったのは冒頭からp.15まで。いつも通り、基本的には参加希望者に事前にテキストを渡し、予習してきてもらいました。当日その場で当てられた箇所をひとり1~数コマ単位で訳してもらい、必要に応じて文法事項や背景情報をみんなで補足し合いました。
   もっとも、今回の作品は文字数が多い上に、引用や参照が散りばめられていることもあって、実際には7ページ分しか進みませんでした。今までこの会で取り上げてきた作品の中でも屈指の、訳し甲斐のある作品と言えるでしょう。この会ではヴァラエティに富んだバンド・デシネを取り上げていますが、とっつきやすいものも、難しいものも含めて、さまざまなタイプの作品を読んでおくのは、バンド・デシネの懐の深さを知る上でもとてもいいことだと思います。
   『現代のオランピア』の主人公はオルセー美術館所蔵のエドゥアール・マネの名画「オランピア」に描かれたオランピアその人。彼女は駆け出しの女性モデルで、一流モデルになるべく日夜奮闘中です。この作品は、絵画のキャンバスを指す「トワル(toile)」という言葉が映画のスクリーンという意味にもなる点から出発して、絵画の制作を映画の制作に見立てて物語が進んでいきます。冒頭、いきなりオランピアが「ロミオとジュリエット」という架空の名画を鑑賞しているシーンから始まるのですが、そのシーンからして既にオルセー美術館所蔵の絵画が3点引用されています。本書が引用・参照している作品はオルセー美術館のウェブサイトの以下のページにまとめられています:https://www.musee-orsay.fr/fr/collections/publications/moderne-olympia.html
   もちろんこうしたことを知らなくても物語を楽しむことはできますが、翻訳する上では作者の策略をできるだけ把握しておくに越したことはありません。本書はそれが非常に巧みに作られているだけに、参加者一同、悪戦苦闘の連続でした。例えば、「ロミオとジュリエット」が参照されているのであれば、既訳を使う必要があるのか、そもそもこの作品の中で使われているセリフは本当にシェイクスピアの作品の引用なのかなど、さまざまなことを考える必要があるでしょう。
   また、作者のカトリーヌ・ムリスは『シャルリ・エブド』で活躍したバンド・デシネ作家でもあり、本書にも『シャルリ・エブド』的な意地悪な冗談がところどころに登場します。普段読み慣れていないであろう、そのような言葉遣いに触れられたのもよい経験だったと思います。

   今後も引き続きさまざまなバンド・デシネを読んでいきたいと思います。


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