Maison Franco-japonaise: 日仏会館 日仏会館・フランス国立日本研究所(Umifre 19 フランス外務省・国立科学研究センター)

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2019年11月07日(木)

「バンド・デシネをフランス語で読む」第3回レポート

6月26日(水)と28日(金)の18時半から日仏会館図書室読書会「バンド・デシネをフランス語で読む」第3回を開催しました。両日とも使用するテキストは同じです。

日仏会館図書室 読書会
バンド・デシネをフランス語で読む 第3回
日時:2019年6月26日(水)、28日(金)18時半~20時 
場所:日仏会館図書室
とりあげた作品:Michel Rabagliati, Paul à Québec, La Pastèque, 2009.
参加人数:6月26日(水)11名/6月28日(金)15名
進行役:原正人氏 

日仏会館図書室では、バンド・デシネをフランス語の原書で読む読書会を今年4月から開催しています。進行役を務めてくれたのはバンド・デシネの邦訳を多く手がけている原正人氏です。原氏による読書会の趣旨の説明に続いて、参加者全員に簡単に自己紹介をしていただき、読書会がスタートしました。
なお、「日仏会館図書室 読書会 バンド・デシネをフランス語で読む」は、今後、月1回ペースで開催していく予定です。ご興味のある方は、当図書室の告知をご確認のうえ、お気軽にご参加ください。
以下、原正人氏による読書会の報告です。

今回取り上げた作品は、ミシェル・ラバリアティの『ケベックのポール』(Michel Rabagliati, Paul à Québec)です。2009年にカナダのモントリオールの出版社La Pastèque(ラ・パステック)社から出版されました。
Cov Quebec 300.jpg    ミシェル・ラバリアティは日本では今のところほとんど知られていませんが、カナダのケベックでは非常に人気のあるバンド・デシネ(BD)作家です。とりわけポールという中年男性とその家族を主人公に据えた「ポール」シリーズでよく知られていて、本書『ケベックのポール』は、その6冊目に当たります。
   ちなみにケベックはカナダの一地域ですが、8割の人がフランス語を母語とし、フランス語で書かれたBDも多く出版されています。ミシェル・ラバリアティの「ポール」シリーズはその中でも人気タイトルのひとつで、ケベックだけではなく、フランスやベルギーでも広く読まれています。2010年にはフランスのアングレーム国際漫画フェスティバルで「読者賞」を受賞しました。2015年にはケベックで実写映画化もされています。
   物語の舞台は1999年のケベック。主人公のポールは妻のリュシーと娘のローズと一緒に妻の実家を訪れ、親類たちと6月23日から24日にかけてのケベックの日のお休みを過ごすことになりますが、やがて妻の父親ロランが癌に冒されていることを知ります……。
   今回、訳読の対象となったのは冒頭からP15まで。前回同様、基本的には参加希望者に事前にテキストを渡し、予習してきてもらいました。当日その場で当てられた箇所をひとり1コマ~1ページくらいの単位で訳してもらい、必要に応じて文法事項や背景情報をみんなで補足し合いました。
   フランス語圏とはいえ、ケベックの文化がフランスやベルギーと異なるのは言うまでもありません。本書にはそういった違いが随所に盛り込まれているのに加え、ケベック独自のボキャブラリーや文字表記が随所に登場します。そういったこともあって、参加者の皆さんからは、今まで取り扱った作品以上に読むのが難しいという意見が聞かれました。なお、28日(金)の回には、ケベック出身のフランス語母国語話者の方(図書室スタッフ)が参加、それらの点について貴重な解説をいくつもいただくことができました。
   また、本書は古典的なBDの形式をしていて、今まで扱った作品に比べるとページあたりのセリフの量が多く、時にはひとつのコマの中で10人もの登場人物が一斉にしゃべっているような箇所もあります。こういった箇所を正確に読みとくためにはセリフの順番を正しく理解する必要があり、それをスムーズに行うためにはある種の慣れが必要になってきます。
   高い評価を受けているだけあって、非常にすばらしい感動作なので、フランス語が読める人にはぜひ挑戦してもらいたい作品です。

   今後も引き続きさまざまなバンド・デシネを読んでいきたいと思います。


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