6月
27
2025

国際討論会シリーズ「建築遺産の復元」の第3回目のセッションは、フランスと日本の建築遺産復元・復原プロジェクトの工事と技術に焦点を当てる。建築や技術的な手法の違いにもかかわらず、フランスでは特に石造建築、日本では木造建築が用いられていることから、両国はともに、建築物の修復に関する長い歴史と伝統を持つという点で共通している。そして、この伝統は、過去と現在の建築現場において特に顕著に表れており、これらの現場は、技術的知識と文化の表現と伝承の重要な場となっている。

ヴァレリー・ネーグル氏(建築士、パリ第1パンテオン・ソルボンヌ大学教授)は建設現場と工事に関する専門家として、19世紀から20世紀にかけてのフランスの建築遺産の復元に見られる技術的伝統について紹介する。一方、清水重敦氏(京都工芸繊維大学教授)は、木造建築物の復原・復元工事における「オーセンティシティー」の原則について講演する。

ヴァレリー・ネーグル「フランスの文化遺産復元の技術文化(19〜20世紀)」

ヴァレリー・ネーグル(パリ第1パンテオン・ソルボンヌ大学)

建築学校卒、現在はパリ第1パンテオン・ソルボンヌ大学で技術史の教授を務める。ネーグル氏の研究は、近代末期から現代初期にかけての建築と建設の歴史に焦点を当てていて、職人技の知識の特定と記述に貢献している。最近の研究では、技術表現の分析に重点を置いている。パリの建築・遺産博物館で開催された展覧会「L’Art du Chantier. Construire et démolir du XVIe au XXIe siècle」のキュレーターを務め、同名のカタログ(2018年)の編集も担当した。さらに、J. ボードリーと共同で『Dessiner la technique. Pensée et discours visuels』(2024年)を編集。また、オクシタニーの煉瓦造りの施工、維持管理、修復の歴史に関するプロジェクト「THERESA」の共同責任者を務めている。

清水重敦「木造建築遺産のオーセンティシティー復元・復原を巡ってー」

清水重敦(京都工芸繊維大学)

1971年東京生まれ。1993年東京大学工学部建築学科卒、1999年同大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程単位取得退学。2005年東京大学より博士(工学)の学位取得。1999年奈良国立文化財研究所(現独立行政法人奈良文化財研究所)に研究員として採用。平城宮第一次大極殿の復元研究及び復元工事指導に関わる。同研究所景観研究室長を経て、2012年京都工芸繊維大学准教授、2017年同大学教授となり、現在に至る。専門は都市建築遺産論。日本及び東アジアの建築史研究をベースに、建築、都市・町並み、遺跡、文化的景観等の文化遺産の保存活用に関する研究と実践を行う。著書に『擬洋風建築』(2003年)、『建築保存概念の生成史』(2013年、日本建築学会賞、建築史学会賞、日本イコモス奨励賞受賞)、『辰野金吾』(共著、2015年、日本建築学会著作賞)など。

【司会】デルフィーヌ・ヴォムシャイド(日仏会館・フランス国立日本研究所

【主催】日仏会館・フランス国立日本研究所
【協力】東京大学工学部建築学科
【協賛】在日フランス大使館、GIS Asie、クレディ・アグリコル・CIBジャパン



* 日仏会館フランス国立日本研究所主催の催しは特に記載のない限り、一般公開・入場無料ですが、参加にはホームページからの申込みが必須となります。

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