7月
11
2025

日仏国際討論会シリーズ「建築遺産の復元」の第4回目のセッションは、軍事建築の復元・再建に焦点を当てる。日本では、失われた城郭の復元は20世紀初頭に始まり、地域の活性化・価値向上を目的としたプロジェクトにその起源がある。城郭、特に天守は都市のアイデンティティを象徴し、高い集客力を持っている。近年では、金沢城や名古屋城といった大規模な復元プロジェクトが進行しており、考古学的調査や古文書に基づいた厳密な方法で、当時の材料や技術を用いて御殿、庭園、天守の復元が行われている。一方フランスでは、このような復元の実践はあまり一般的ではなく、日本ほど大規模には行われていない。ただし、伝統的な手法による修復・復原は近年増加傾向にある。特に1990年代後半に始まった、中世の城を新たに建設するというユニークなプロジェクト「ゲドロン城」(ヨンヌ県)は、ある意味で日本の取り組みと共鳴している。このセッションでは、現代社会における2つの城郭建設事例を対比して紹介する。要塞建築の専門家であるニコラ・フォシェール氏(エクス=マルセイユ大学名誉教授)は、ゲドロン城の実験考古学的建設プロジェクトとその技術的・経済的課題について講演する。また、建築史家で軍事建築の専門家である麓和善氏からは、名古屋城の復元プロジェクト―御殿と天守を含む―についてご紹介いただく。

ニコラ・フォシェール「実験的考古学か、あるいは観光資源か  ―フランス・ヨンヌ県の中世城郭「ゲドロン城」公開建設現場の事例ー」

ニコラ・フォーシェール(エクス=マルセイユ大学名誉教授)

ニコラ・フォシェール氏(1957年生まれ)は、城郭史の専門家で、エクス=マルセイユ大学の中世美術史・考古学の名誉教授である。フランスの初期の王立要塞と火薬兵器への移行に関する博士論文を経て、中世および近世の要塞建築を専門とするようになった。彼の研究対象はフランス国内にとどまらず、東地中海地域にまで及び、近東の複数の要塞で考古学調査を指揮してきた。さらに、インドやトルコでも調査活動を行っている。ユネスコの国際的な専門家としての任務も担っており、これまでに100本以上の専門書、学術論文、一般向け著作を執筆している。

麓和善「史跡における復元の理念と実践 ー名古屋城本丸御殿・天守を中心にー」

麓和善(名古屋工業大学名誉教授)

1956年香川県生まれ。工学博士。専門は日本建築史・文化財保存修復。現在、名古屋工業大学名誉教授、麓和善伝統建築設計事務所代表、公益財団法人文化財建造物保存技術協会理事、公益財団法人琴ノ浦温山荘園理事長、公益財団法人犬山城白帝文庫評議員、公益財団法人竹中大工道具館評議員を兼任。その他、五稜郭、弘前城、山形城、金沢城、名古屋城、犬山城、小牧山城、彦根城、姫路城、鳥取城、重要文化財東本願寺函館別院、重要文化財仁風閣他、全国の史跡整備、文化財建造物保存修理の委員を歴任。

著書は、『国宝犬山城天守再考』(犬山市教育委員会、共著)、『松本城のすべて 世界遺産登録を目指して』(信濃毎日新聞社、共著)、『日本の城・再発見 彦根城、松本城、犬山城を世界遺産に』(株式会社ブックエンド、共著)、『城の日本史』(講談社学術文庫、共著)、『庭と建築の煎茶文化』(思文閣、共著)など他多数。

【司会】デルフィーヌ・ヴォムシャイド(日仏会館・フランス国立日本研究所

【主催】日仏会館・フランス国立日本研究所
【協力】東京大学工学部建築学科
【協賛】在日フランス大使館、GIS Asie、クレディ・アグリコル・CIBジャパン

* 日仏会館フランス国立日本研究所主催の催しは特に記載のない限り、一般公開・入場無料ですが、参加にはホームページからの申込みが必須となります。

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