9月
12
2013

【プロフィール】
エマニュエル・ロズランはフランス国立東洋言語文化研究学院(INALCO)で教授を務める。日本近代文学(特に森鴎外、夏目漱石、正岡子規)を専門とし、「日本における個」について研究をしている。著書にLes Tourments du nom (Maison franco-japonaise, 1994), Littérature et génie national (Belles Lettres, 2005)等がある。 

【要旨】
どんな観念にも歴史がある。日本人に個人性に欠けているという考えは、19世紀後半のヨーロッパに始まる。個人vs社会(団体)という見方が広まり、植民地主義が発展した時代である。このような状況のもとで、非西洋社会は総じて原始的共同体に過ぎないと見なされた。さらに、当時優勢であった人種論によってそれぞれの民族を特徴づける傾向も強かった。また、「東洋の国は過去や伝統の国である」という中世の時代からの根強い観念が、「日本が創造力を持たない模倣の地である」という日本観を生む土壌となり、アジアの専制主義というテーマもその個性不足の一つの根拠となった。日清・日露戦争が終わると、黄禍論が流行し、20世紀初頭以降、「個のない日本」という観念は定着してしまう。第二次世界大戦後に興った文化主義においても、「主体の死」に憧れる西洋知識人の妄想においても、このステレオタイプはさまざまな形で繰り返された。日本のなかのオート・ジャポニズムともいえる流れにおいても、この誤った固定観念は繰り返し主張されているのだ。

【司会】 クリストフ・マルケ(日仏会館フランス事務所)

【主催】 日仏会館フランス事務所
【助成】 アンスティチュ・フランセ日本

* 日仏会館フランス国立日本研究所主催の催しは特に記載のない限り、一般公開・入場無料ですが、参加にはホームページからの申込みが必須となります。