国際シンポジウム
「言語帝国主義の過去と現在」

主催:日仏会館・一橋大学フランス国立東洋語・東洋文化研究院(INALCO)
後援:国際交流基金
(入場無料・定員150名,先着順)

[更新日:1999年10月20日]|[PROGRAMME EN FRANCAIS



言語帝国主義の過去と現在

世界には3,000から5,000の言語があるといわれますが国家の数は200足らず、したがって「一言語=一民族=一国家」はむしろ例外で、多言語状況こそが常態です。世界の諸言語のうち国語や公用語の地位にあるのはごく一部にすぎず、それ以外は方言や移民の言語、部族語といった蔑称でなければ地域語や少数言語と呼ばれ、その中には消滅の危機にさらされているものもあります。国語や公用語の地位にある言語には国際語として広く流通している大言語もありますが、多くは交換不能な通貨のように特定の国の外では使われない小言語です。世界の諸言語のあいだの関係は決して平等ではなく、メジャーな言語とマイナーな言語の非対称的な関係が幾重にも重なり合い、かつての植民地帝国の言語を中心に、中心・半周辺・周辺からなる世界の言語の階層秩序を形づくっているのです。しかも冷戦が終わり経済と情報のグローバリゼーションが進行する今日、アメリカの一極支配に対応するように言語ピラミッドの頂点には英語が君臨しており、欧州連合(EU)でもアジアでも共通語は英語になりつつあります。 こうした状況を前にして日本では、英語を外国語として学ぶのではなく第二公用語にせよという声すらあがり始めています。

3世紀以上の年月をかけてイギリスに次ぐ一大植民地帝国を築き上げたフランスと、極東の後発国として欧米列強の脅威に対抗しつつ、わずか50年で東アジアの隣国を勢力圏に収めた日本では、植民地化の条件が歴史的にも地理的にも大きく異なります。 第二次大戦後、独立戦争を伴う困難な脱植民地化プロセスが人々の関心であり続けたフランスとは対照的に、日本は敗戦で一挙に植民地を失い、日本語を「東亜の共通語」にする計画は挫折して、今日、日本はフランコフォニー(仏語圏)に比肩し得る日本語圏をもっていません。それにもかかわらず、フランスと日本の国民国家形成における「国語」の成立過程を振り返り、植民地における言語普及のイデオロギーと政策を比較することは、英語によって周辺化されながらも中心にとどまるフランス語と、半周辺の中の孤立から脱けきれないように見える日本語の将来を考える上で、大きな意味があると考えます。

本シンポジウムでは、内外の専門家を集め、英語の場合を参照しつつもフランス語と日本語を中心に、「内地植民地主義」の延長として言語帝国主義を分析し、フランスによって支配されたマグレブや西アフリカやカリブ海、日本の植民地だった韓国のポストコロニアル状況における言語と文化の複雑なありようを検討します。さらにイヌイット、ロマ、ベルベルなどの少数言語の事例にもとづいて、新しい人権として主張されるようになった「言語権」の概念を明らかにし、大言語のヘゲモニー支配に対抗しうる真の多言語主義の条件を展望したいと思います。


プログラム

(プログラムは,やむを得ぬ事情により変更されることがあります。)


シンポジウム関連行事


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〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿 3-9-25/TEL 03-5421-7641


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