花押(書判)と押手(花押印)

林 譲(東京大学史料編纂所教授)

シンポジウム「文字文化の再創造」,2001年4月7日,日仏会館ホールにて

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[更新:2001-03-30]


発表要旨

 花押とは、自らの名前―日本人男性の名前は漢字二文字で構成される場合が多い―などを基にしてデザイン化した日本的なサインの一種である。原則として花押は自筆で署したが、署する毎に微妙な相異をみせる。例えば、形体、大きさや線の太さ、墨色やかすれなど、同一人物といえども多様な変化をみせ、同じものはないといっても過言ではない。

 しかし、徐々に類型化・硬直化・平板化などの様相を示すようになり、花押の印章化が進み、花押の形を木型に彫り込んで使用することも行われた。これを押手・花押印・花押型・版刻花押などと呼んでいるが、どうして、このような展開を遂げたのであろうか。本報告では、花押単独ではなく、花押が据えられている文書全体との関わりを意識し、具体的な事例をあげ、以下の目次にしたがって、如上の課題を考えていくことにしたい。


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