Maison Franco-japonaise: 日仏会館 日仏会館・フランス国立日本研究所(Umifre 19 フランス外務省・国立科学研究センター)

言語:JA / FR


研究活動

ロラン・ネスプルス

所属
連絡先 :
考古学博士、フランス国立東洋言語文明学院(Inalco)准教授
大学委員会15部(日本言語文学)、20部(人類学・先史学)、21部(原史・古代史、考古学)

博士論文
『フランスから見た日本列島における農耕社会の形成期から政治権力の形成期まで 日本列島原史を考える』、全2巻700頁、2007年,パリ第1大学(考古学)とInalco、満場一位による最高評価

・    2012年9月から日仏会館 フランス国立日本研究センター(UMIFRE 19)に配属
・    2008年9月からパリ第1大学TRACES研究所(Trajectoires de la Sédentarité à l’État 定住化から国家形成過程研究所)所属
・    2008年9月からInalcoの日本文化研究所所属(CEJ-EAD 1441)所属
・    2008年9月からInalco日本学科准教授に任命
・    2008年4月から大阪大学考古学研究所協力研究員
・    フランス外務省ラヴォワジエLavoisier奨学金をもって大阪大学ポスドク、2007-2008年
・    日本文部科学省奨学金をもって大阪大学で留学、2004−2008年

研究テーマ
・    先史・原史における政治権力と社会エリートの形成と発展
・    考古学の研究史および考古学研究の哲学

日仏会館での研究計画

考古学・国民アイデンティティ・埋葬文化財

本研究関連参考論文
–Nespoulous Laurent, « Des Empereurs et des tombes – Une archéologie de l'archéologie protohistorique japonaise », in Ebisu-Études Japonaises, no 30, Maison Franco-Japonaise, Tôkyô, 2003, p. 87-122.
–Nespoulous Laurent, « Mémoire, tradition, symbole et archéologie impériale », in Ebisu-Études Japonaises, no 32, Maison Franco-Japonaise, Tôkyô, 2004, p. 3-24.
–Nespoulous Laurent, « Memories from beyond the past  Grasping with prehistoric times in Japan: Birth and evolution of an “archaeological consciousness” (17th to 20th centuries)», in Rosa Caroli & Pierre-François Souyri (ed.), East Asia History in Debate, Ca Foscari University Press, Venise, 2012, p. 107-118.
–Nespoulous Laurent, http://www.reseau-asie.com/article-en/thoughts-ways-means-archaeology-japan-laurent-nespoulous/

計画案
ヨーロッパや日本など歴史の古い国家においては、遥かな「上代」や物的史料に対する共通の熱意が存在し、それに依拠してナショナル・アイデンティティーが作り上げられてきた。とはいえ、このプロセスやその背景は、いまだに充分に検討されていない。こうした古代像や物的史料を作り上げた「手法」とは、とりわけ、20世紀初頭に「大いにナショナルな学問」(G. Kossinna)と形容された<考古学>であり、考古学上の発見は国民的文化財として再定義され、物的文化こそが国民の連続性とその長い歴史を具現化するものとして捉えられてきた。周知の通り、考古学が「上代」より出土させた遺物は 、国民国家が持ち合わせていた略奪的な野望を過去において繰り返し正当化したことがあり、考古学そのものが、19世紀〜20世紀前半の帝国主義的国家の下、当時いまだに「国民」として自己認識していなかった人々に一種の共通な基盤を与えたのである。また、考古学と文化財は、例えば1945年以降の日本においてそうであったように、一国の有様が激変する時期に、その主権の及ぶ範囲内において「民族」の自己意識を再定義する役割を担ったりする。常に変貌する近現代社会がいかに自己を認識するかという点を考える上で、考古学は間違いなく大変有効な分析対象であると言える。
 フランスと日本は、特に自らの文化財を重んじる国であり、遺跡や遺物をもって自己の古い歴史を復元しようとする学芸員や研究者が数多くいる国でもある。考古学と文化財は、それが事実であれ想像であれ、いわば(フランスにおけるガリア人、日本における縄文人と弥生人など)過去に対する一種の特別な関係を持ち合わせる領域だと言える。だからこそ、19世紀以来の「国民の歴史」を構想する動きを考える上で大変重要な役割を果たしてきた<考古学>と<文化財政策>について、フランスと日本におけるその実践と言説を明らかにすることや、近現代社会が変化するプロセスにおける考古学的言説の推移を明確に捉えることが、比較史の視点からも大変有意義であると思われる。
 ところで、「過去の再活性化」という目的をもって発展してきた考古学と文化財政策の言説と実践を明らかにすることは、中華人民共和国や大韓民国においても重要である。1950〜60年代以降、各国とも埋蔵文化財を利用して「上代」にまで遡る自らの「国史」を復元することに熱心であり、場合によってはひと昔前の欧州各国のようにアイデンティティにまつわる要求や領土問題にかかわるあつれきを引き起こす事態も生じている。こうした現状からみても、このシンポジウムにおいて検討しようとする課題の重要性が理解されるだろう。
 他方、自由主義型グローバリゼーションの動きは、財政上の自立性がいっそう要求され、地方の負担が増えた。地球が狭くなりつつある現状において、国民というアイデンティティの再構築を促すことにもつながっている。
 本シンポジウムは、<文化財>という領域における研究対象の形成、「考古学的意識」の形成の過程や、それらの社会的・政治的利用に注目することによって、「国民の歴史」の主なベクトルである(過去への追求の正当性を支えた)考古学的言説やその研究テーマと、(文化財のなかに国民とその起源を見つけ出そうとした)博物館の言説の両者を細かく検討し、グローバルな規模で世界が激変しつつある現在において、フランスと日本の間に比較の視点を提起することを目的とする。
 より具体的には、次の三つの企画をもって展開する予定である。
 ・日仏講演会シリーズの開催
 ・国際シンポジウムの開催
 ・『Ebisu』日本研究学術誌の「博物館/文化財」特集号を編組

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