ミシェル・テリアン
(INALCO)
国際シンポジウム「言語帝国主義の過去と現在」 (1999年10月22日〜24日/於 日仏会館・一橋大学) |
[更新:1999-11-10]
カナダ北極圏のイヌイットにとって、1950から60年代は暗黒時代であった。カナダ政府はイヌイット語を、将来のない言語、進歩にとっての障害と考え、その根絶を企図したのであった。イヌイットたちは自身の言語に対する愛着をもって力強くこれに対抗し、それによって数千の新しい単語を創造したのである。
イヌクチトゥット(カナダ北極圏東部で話されている言語)が近代社会に参入していくための道具となった。語彙の創出の源になるのは経験ばかりではないが、それでも借用語は稀であった。
イヌイットたちは、柔軟性に富んだ言語を継承していることを自覚しており、新語の導入が、既存の言葉とそれらの違いを際だたせることのないように、大多数の言葉とそれらとの接触が正当なことであり、その平等な関係を促すようなものとなるようにしたのである。
外部世界に開かれた言語はそこからもたらされる物に一種の規制をもうけ、物質的、知的、イデオロギー的な支配を制限しようとする。新語導入とは、そこでは、ある立場の選択であり、内発的な行動である。それは変化しつつある現実のイヌイット化 ― 全的な拒否でなく ― につながるものである。
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