Maison Franco-japonaise: 日仏会館 Bureau français  Institut français de recherche sur le Japon  (UMIFRE 19, MAEE-CNRS)

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連続講演会「日仏における考古学と埋蔵文化財」

戦後の日本とフランスにおける埋蔵文化財保護行政

[ 講演会 ]

使用言語:フランス語 (同時通訳付き)
日時: 2013年10月26日(土) 16:00 - 18:30
場所: 1階ホール
【講師】
ジャン=ポール・ドムール(パリ第一大学、フランス国立事前考古学研究所元所長)
坂井秀弥(奈良大学文学部文化財学科)

【ディスカッサント】 稲田孝司(岡山大学)
【司会】 ロラン・ネスプルス(日仏会館・フランス国立日本研究センター)

【要旨】(ドムール)
フランスは、事前考古学という政策分野では、かなり後発の国だといえる。そもそもフランスは、歴史上、長期にわたって中央集権によって統一され、さらに19世紀まではその言語がヨーロッパの知的空間の共通語だったこともあり、国民国家的なアイデンティティの形成において、考古学はあまり重要な役割を果たしてこなかった。実際、ルーブル美術館に収められている考古学的な展示物のうち、フランス国内から発掘されたものは皆無なのである。さらに1950年代、60年代には、非常に多くの考古学的な価値を持つ遺跡が復元不可能なほどまでに壊されてしまった。こうした状況が少しずつ変化するのは1970年代に入ってからのことだ。折しもフランス社会を襲った経済危機によって、人々は、自らのアイデンティティや過去に、かつてない強いまなざしを向けるようになる。2001年になると、法的な整備がようやくととのい、国立研究所が実施する発掘調査への開発者側負担が義務付けられるようになった。しかし、この政策は保守派の政権によって非難の対象にもなっている。

【要旨】(坂井)
「戦後日本における埋蔵文化財保護行政」
 考古学の研究資料である遺跡は、日本では文化財保護法により「埋蔵文化財」として保護されており、土木工事で影響がある場合は、原則として事業者の負担により発掘調査(記録保存調査)が行われることになっている。この種の調査が発掘調査全体の大半を占め、その規模は世界屈指とされている。記録保存調査以外の、遺跡の保存・活用を目的とした調査も含めて、遺跡の調査は、都道府県と市町村の財団を含む地方行政が役割分担しながら担っている。地方行政には、主として考古学を専門とする約5900人(都道府県関係約2000人、市町村関係約3900人)の担当者が配置されている。行政が行う調査であっても考古学の水準を維持し、得られた成果は考古学研究に活用されるべき資料と認識されている。行政の調査により多様な遺跡が発見され、考古学・歴史研究に大きな役割を果たした。
 地方行政主体の調査体制は、地域に根差した調査を可能にし、地域史の解明とそれに基づく保存・活用や地域づくりを推進する点において大きな意味をもっている。日本では、遺跡は地域に対する愛着と誇りをもたらす拠り所であり、地域の文化財は地域で保存し活用するという考え方がある。そのため、遺跡の発掘調査を地域外の者に委ねることや、ビジネスの対象と考えることに懐疑的な感情がある。それが地方行政主体の調査体制構築を実現した大きな背景でもあるが、こうした理念の形成においては、日本は大きな民族交替を経ておらず遺跡が自らの祖先が残したものと認識しやすいことや、戦前の記念物行政や郷土教育の政策により、各地域で遺跡調査に取り組む環境が存在したことがあったことが大きいと考えられる。
 戦後から現在までの約70年間においては、1964・65年に記録保存調査は地方行政が主体となる方針が確立し、その後20年ほどでその体制がかなり整備された。しかし、1994年頃から社会のグローバル化に伴って行政改革や規制緩和が指向されるようになり、2004年には郵政の民営化や国立大学の独立法人化などの構造改革が断行され、遺跡の発掘調査も外部委託すべき業務とする見方が強まり、都道府県を主とした財団法人の調査組織が民間と位置付けられるなど、日本のよき調査体制をゆるがす状況が生まれつつある。

【プロフィール】(ドムール)
ジャン=ポール・ドムールは、ヨーロッパの先史時代を講じるパリ第一大学の教授であり、フランス大学学院のメンバーでもある。新石器時代と鉄器時代を専門とし、これまでにフランス、ギリシャ、ブルガリアなどの発掘調査に従事してきた。2001年に発効された事前考古学法の推進者のひとりでもあり、その結果として設立されたフランス国立事前考古学研究所の初代所長を2008年まで務めた。近著として、On a retrouvé l’histoire de France (2012), Naissance de la figure (2007)がある。また共著として、ピエール・スイリとArchéologie et patrimoine au Japon (2008)を上梓している。

【プロフィール】(坂井)
奈良大学文学部文化財学科教授、博士(学術)
1955年、新潟県新潟市生まれ。1980年、関西学院大学大学院博士前期課程修了。その後1993年まで新潟県教育委員会において、県内各地の遺跡発掘調査と埋蔵文化財保護行政を担当。1993年から2009年まで、文化庁記念物課(埋蔵文化財部門)文化財調査官・主任文化財調査官として、全国各地の遺跡保存と埋蔵文化財行政の課題検討に取り組む。2009年4月から現職。
研究としては、一つは、おもに日本古代の集落と開発、生産・流通などについての地域史的実践、もう一つは、文化財保護行政論です。とくに埋蔵文化財・史跡の保存と活用、文化財と地域づくりの実践です。

【主催】 日仏会館フランス事務所
【協力】 大阪大学、日本大学経済学部
【助成】 アンスティテュ・フランセ日本
【後援】 日仏美術学会、日本考古学協会、日本遺跡学会、NGO日本イコモス国内委員会

* 日仏会館フランス事務所主催の催しは特に記載のない限り、一般公開・入場無料ですが、参加にはホームページのイベントカレンダーからの申込みが必須となります。警備強化のため、当日の受付に際しては身分証明書の提示をお願いしております。

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